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始まった石原産業フェロシルト不法投棄事件

 性懲りも無くと言ってはばからない石原産業の「産廃投棄」、酸化チタン製造で出る廃棄物を、前回は四日市港へ1日20万トン(検挙されるまでに1億トン)をたれ流し、船舶の航行に支障をきたす、漁業資源を損なうという重大な犯罪行為をなし、検挙から、判決まで10年を要した「廃硫酸たれ流し事件」は、二人の工場長が執行猶予つきの懲役刑、会社8万円の有罪判決で、会社は控訴することなく刑に服した。
 今回は、海へのたれ流しができなくなったので、山間部へ「普通の土」と変わらぬものとして、しかも、三重県認定のリサイクル商品として、売却した。
 値段は、1トン100円ないしは150円という極めて安い物品である。しかし、売りもとの石原産業は、100円なしは150円で売った金の30倍ほどになる3000円ないしは3500円を買ってくれた相手に「研究費」などの名目で支払っていた。それでも、産廃として処分するよりははるかに安い産廃処分費であり、なによりも、リサイクル商品のお墨付きがあり、堂々と処分することができ、会社の利益は飛躍的にたかまった。
 しかし、どっこい、岐阜や愛知こは、産廃不法投棄に関心と監視に目を光らせていた女性グループが存在していて、放射性廃棄物・六価クロムなどの有害廃棄物であることをつきとめ、それぞれの県に、投棄禁止と回収を要求した。両県は、「三重県がリサイクル商品と認定しているものにどうこうは言えない」と県同士の仁義を楯に動かない。ならばと、三重県への攻撃を開始、この間、「四日市で造られた有害廃棄物なのに、四日市の人たらはどうしているのですか…」「石原産業の佐藤副工場長がやってきて、ケナフがよう育ちますとか、普通の土と変わらぬ安全なものですとか言っているが、佐藤副工場長とはどういう人ですか」と電話で話しかけがあり、気がつかずにいたことでもあり恥ずかしい思いをした。
 恥ずかしい思いのあと、なんでこうしたことが起きたのかを考えたりしたが、なんといってもー番は「公害は克服された」の宣伝に麻痺していた、だから「関心・監視」を怠っていたことである。

 新聞・TVで報道されるようになって、おやおやと思ったのは、社長とともに頭を下げて廻っている常務は、社長同様、その前は工場長であった安藤正義氏である。
 彼は、若い頃から労組役員で、今日あるを予想されていた人物である。それにしても、出世したものだと思った。石原産業では、かって石原広一郎ワンマン社長追放で長期のストライキ闘争を指導した石原労組本部(本社)委員長が社長になった経緯もありで、安藤氏の出世もありうることではあるが、それにしても常務とは出世したものだと、労組役員の頃を知る者として、変に感心した。フェロシルト事件がなければつぎは社長になったかもしれない。
 そうなるだろうと思ったのは、特に産廃の諸悪の根源は「三重県環境保全事業団」であるとかねて思っていたからで、この事業団は設立当初(1977年9月)から、役員は理事長(県知事、その後は環境部長の天下り)、理事はコンビなどの工場長と市長などで、その後は石原産業工場長だけ、当時は安藤氏、事務局長は県の検査センター。これでは、捨てるものと監督・チェックするものだけで、捨てられて困る住民はいない、御用学者もはいっていない。有害産廃がリサイクル商品として認定を受ける土壌はできているわけである。
 しかも、安藤氏lま長らく三重県の労働組合幹部であり、三重県幹部との付き合いもある。石原産業の会社にとって貴重な功労者である。

 労組といえば、かって四日市の労働運動をリードしたのは石原産業労組で、ストなしで要求・交渉が解決すると、「赤旗(地区労組の組合旗も)が立ち並ぶことなく妥結した」と、珍しがられたほどで、赤旗が立ら並ぶ光景が見られなくなって以降、石原労組の闘争は影をひそめていった。

 それが、ぜんそ<裁判判決直後(1972年7月)の9月に、石原産業労組本部大会が開催され、運動方針に「職場から公害を出さないようにする」ばかりではなく、地域の労組に呼びかけ連帯して「公害を出さない運動をすすめる」とのあっぱれな方針を決めた。石原産業労組の復活をみたが、方針は紙のうえだけにとどまった。この方針で進んでいたら、よその工場廃液までもとりこんでの有害廃棄物を投棄(公害を職場から出す)ことはなかったはずだ。個人で言うとクビか左遷されるかだが、労組として、方針に基づいての要求を会社に出して闘えば「職場から公害を出さない」決議は実現したはず。安藤氏はそうした運動方針の決議にかかわっていたはずである。

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