四日市公害対策協議会(略称・公対協)革新の側の反公害

☆1963(昭和38)年7月1日発足
三泗地区労働組合協議会(地区労)、日本社会党四日市支部、日本共産党北勢地区委員会、四日市革新議員団、三重県化学産業労働組合協議会(三化協は、この都市の秋に参加。)

◆当面、各自近い・婦人会・青年団や各団体に呼びかけ、7月9日、午前10時より、市民ホールにおいて公害をなくす四日市市民大会を開き、公害をなくする決議をし、集会後直ちに平田市長と交渉することを決め、団体への呼びかけ、地区労各組合の動員で、7月6日の午後5時、近鉄の7駅、国鉄の2駅でビラまき。

決議文

四日市市の石油化学工場から出る悪臭、煤煙、騒音、有害ガス、汚水による公害は、誰の目にも明らかに深刻な事態になり、市民の生活の破壊になろうとしています。
市当局は、調査をしなければとか、公害対策委員会を作ったからとか、いろいろ市民をごまかしてきました。市民も、四日市の発展のためならとか、市当局が何かの対策をするだろうと辛抱してきました。
しかし、最近、中部電力四日市火力と大協石油の操業により、その被害はますます増大し、局部的なものから、全市的なものになってきました。
もう、私たちは、黙って成り行きに任しておくわけにはいかなくなり、本日、市民ホールに集まり、市民大会を開きました。
私たちは、きれいな水と、きれいな空気と、騒音のない住宅や学校を、市民の手にとりもどすため、次のことを要求します。

  • 四日市市議会で、公害防止の決議をし、具体的な処置をして下さい。
  • 市長は、市民の生活と健康を守るため、工場誘致異常の熱意を持って、国や県と交渉して下さい。
  • 市長は、市民の要求の先頭に立って、加害者である会社と話し合って、公害防止の処置を、責任もって一日も早く解決して下さい。
  • 市長は、現在出している各地域の実情をよく聞き、適切な処置を早急にとって下さい。

私たちは、公害がなくなり、住みよい四日市になることを心より望み、そのため、みんな力を合わせて行動します。
1963年7月9日

公害をなくする四日市市民大会

当面の公害対策について

1963年7月24日、四日市公害対策協議会

四日市における産業公害は、最悪の人権侵害といわれる状態を示している。特に四日市火力ー大凶石油化学のいわゆる第2コンビナートの稼動によって、いよいよ全市的規模で公害が発生し、市民生活を脅かすに至った。
これらの現在起こっている産業公害は、仔細に点検すれば、その大部分が企業側の不注意や不誠意から出ているといえる。したがって、公共団体と企業の努力によって市民の生活を守ることができる。
市民は、激しく市・県当局に処置を要求し、企業に対しても即時対策施与と追求する抗議の行動を新聞が報じている。これらの自治会や婦人会による運動は部分的であったり、せつな的な要求にとどまり、十分な広がりと深まりを持っていない。また、地域的なセクトに陥りがちである。
われわれは、公害に対する市民要求を着実に組織し、運動かを進めるために、当面、次のように行動する。

公害対策協議会の組織と活動

◆事務局体制
代表者会議(4団体・代表4名)および実行委員会(3団体から6名)

◆地域の組織化
労働者の居住組織(勤労者協議会)を作り、これを中核として、広く地域市民が参加する地域集会を組織し、これを公対協の単位組織とする。この地域集会は、公対協のために公害対策委員会を民主的に選出し、公対協委員会を作る(町単位で1名)

運動と目標

◆当面、主として石油化学コンビナートが排出する煤煙などの大気汚染及び音響による市民生活の侵害を無くすため、市民要求を結集し、統一してし・県・国に処置せしめ、企業において防除設備を完備させる。

◆生活環境の改善のための公共投資(住宅、森林、公園、街路など)を充分に行なうように要求し、市民の生活と健康の維持向上を目的とする公共投資を重点的に取り上げさせる。

◆公害の中佐、研究機関の設置と拡充を要求する。それは、公害発生の原因、公害の性質、公害の人体への影響、公害の農漁業・工業など、産業間の影響、市民生活に及ぼす物的損害などの長年月に至る調査研究体制の確立と調査結果の公表を、市・県・国当局に至急政策化させる。

◆効果的な公害防止条例を制定させる。すでに、東京都(S24)、神奈川県(S26)、大阪府(S29)、福岡県(S30)、新潟県(S35)、静岡県(S36)、川崎市などが独自の条例を持ち、専門部課を置いて活動を進めている。このような責任体制をとらせるよう要求する。

◆石油化学コンビナートに働く労働者の職業病の実態を調査せ、職場環境改善の運動を進める。

◆これらの要求を実現するため、市長、知事、その他の関係機関との交渉を行ない、必要な情報の収集と提供など、宣伝活動、調査活動を行なう。

経費

地区労、社会党、共産党において、3:1:1の割合で負担するとともに寄付金を加える。

支出予定 計295.000

宣伝費 80.000 各種宣伝、報告、ビラ、チラシなど、市民集会1回につき4万円

行動費 200.000 集団交渉、陳情など

通信費 5.000

予備費 10.000

午起町2区自治会の陳情書


1963(S38)年7月9日の公対協呼びかけの市民大会の際、参加した自治会長が持参して報告。

公害対策(阻止)について 陳情書


貴職にはご健勝にて、多難なる姿勢に日々ご尽力を賜り、深謝申し上げます。
陳者私どもは、最近、新聞、ラジオ、テレビ等で報道されたように、日夜公害(空気、汚染、騒音、交通)に悩まされております。
当地区は、ご承知の通り、戦前は白浜青松の午起海岸として海水浴場で知られた風光明媚な環境に恵まれた住宅地帯であり、戦後の都市計画でも住宅地域指定区域であるとも聞いていました。
私どもは、この環境衛生の優れたこの地を安住の地と、お互いに選び、住居を構えたのが実情であります。
ところが、私どもが夢にも予想しなかった午起海岸一帯が、産業開発のための土地造成で埋め立てられ、石油コンビナートの一角として、石油化学工場の新設、火力発電所の設置等、建設工事は進められ、今や盛んに、事業開始前の準備段階の収集のテストが行なわれ、すでに、騒音、煤煙、有毒ガスの発生、悪臭等、いわゆる公害が次から次へと発生し、精神的、肉体的に被害が生じている現状であります。
今後、各工場が一斉操業ともなれば、公害は日増しにし烈を増し、不慮の災害の惹起が懸念され、まことに憂慮にたえない次第であります。
私どもは、日夜公害に怯え、生活の夢は完全に破られることは火を見るより明らかです。これでは、日本国憲法第25条により保障された、国民の最低限どの生活を営む権利すら認められないことになります。
産業土地発展のためにする工場事業場の誘致にあえて反対するものではありませんが、これらの工場から生ずる公害に対しては絶対反対です。
工場暴力≪公害≫は絶対阻止しなければなりません。
工場事業場は、地区住民からの苦情注意に対しては問題にせず、処置をこうじようとする誠意はひとかけらもないのが実情です。
私どもが日々苦慮している実情と今後の生活不安についてご賢察の上、公害防止について、何分のご処置を賜るようご懇願致します。
住民一同連署して、次の事項をあわせて要望し、この段、陳情致します。

  • 工場事業場に対し、公害発生を絶対防止させるよう、処置を講じられたいこと
  • 住民の最低限どの生活を営む権利を認めること。特に、住民の健康を保証すること。
  • 午起町2区に、大気汚染について科学的測定器を設置し、常時検査され、その成績を住民に周知方を講ずること。
  • 日々の公害に対して住民の感情は非常に高ぶっておりますから、このままの状態を一日も捨て置くことなく、速やかに善処方申し入れます。

以上

四日市公害対策協議会の知事交渉項目 1963年7月31日

7月24日の代表者会議で、知事交渉は次の5点に絞って行なうことを申し合わせました。ご了解をお願いします。
  1. 県と市の責任問題互いになすりつけあって、うまくいってない等々
  2. 公害対策室を県は新しく作ったが、その内容と、現地の体制を明らかにさす。
  3. 加害企業に対する県のはたらきかけには、公対協の代表も含めよ。
  4. 塩浜病院で無料検診を行なっているが、無料治療も行なえ。その他の病院においても、公害のため発病したものについては、本人に負担をかけるな。
  5. 県が集めている調査資料を全部公開せよ。今後も直ちに公開し、県民に知らせよ。

四日市公対協・三重県知事への抗議・釈明要求書

1963年8月16日
三重県知事田中 覚殿
四日市市尾上町 労働会館内
四日市公害対策協議会

去る7月31日、四日市公害対策協議会との知事交渉において、県民福祉向上の見地から、産業公害の排除に積極的な努力を約束されたことは、私たちの記憶に新たなものであり、また、被害地区住民としてもころを了とするものです。
しかるに、8月15日付、伊勢新聞第一面に高谷副知事談が掲載されているのを見ると、公害問題に触れてロッテルダム、ロサンゼルス、デトロイトとも、石油化学、重化学工場が近くにあり、四日市同様、市内に悪臭が流れ込んでいるが、人体に影響内として市民が騒げたてるようなことはないらしい。くさい魚も捕れているようだが、これも問題にしていない(以下略)」
このことは、知事の私たちに対する言明と矛盾し、県民の苦しみと怒りを愚弄するものと思わざるを得ません。このような談話が公式の記者会見で副知事から発表され報道されていることは、関連企業を一方的に擁護するばかりでなく、マスコミュニケーションを使って、住民の要求を不当なものと考え、その声を弱めようとする明確な意図が感じられます。
私たちは、高谷副知事の談話の公害問題についての内容に怒りをもって抗議するとともに、改めて知事の釈明を要求します。