コスモへの意見書

当発電所の建設の意義

発電所の建設の意義について、大きな疑問を抱くものである。本来、石油精製を業務とする貴社が、発電所を建設しなければならない根拠がどこにあるのか。「霞ケ浦地区の弊社所有地及び四日市製油所設備を有効利用」とうたわれているが、これはあくまでも貴社本人の事情にしかすぎない。昭和54年に四日市港管理組合から買い上げたのは原油、石油タンクなどの建設を目的としていたはずである。にもかかわらず、当初の計画が破たんをきたし、その土地を遊ばせておくのはもったいない、あるいはたまり過ぎた残油の処分をなんとかしなくてはという社内事情が丸見えで、そこに電力需要の規制緩和を結び付けての発電所計画は全く企業本位の姿勢でしかない。
 この土地の有効利用を考えるならば、むしろ、工場地帯の緩衝ゾーンとして、公園等の施設を設け、市民に開放する方がなによりの「有効」利用なのではありますまいか。

残査油の濃度

 環境への影響調査の概略が述べられているか、当発電所の燃料に重質油(減圧残油)が用いられているのは全く、理解に苦しむところである。この重質硫黄(S)分は、4.6%と明記されている。かつて、四日市公害の被害甚大であった1,963(昭和38年)残査重油で3.0−4.3%という数値であった。これらと比較すると今回使用予定の残査油の硫黄分の濃度の高さは異常である。
 「高性能の排煙脱硫装置を設置」とうたわれているが、詳細は記載されておらず、大気質の改善は全く期待できない。また、逆にこのような残査油を燃焼しなければ脱硫装置に巨費を投じる必要もないのである。

温暖化防止に逆行

 さて燃料とある「重油」とはつまり「化石燃料」である。一昨年のCO P3(地球温暖化防止京都会議)において指摘された通り、全世界において温室効果ガスの大幅削減が叫ばれているのは周知の事実。にもかかわらず、今、貴社のされている計画はその指摘に逆行するものにほかならない。「石油精製で培った技術」を有する貴社エンジニア諸氏であれば、この計画がいかに無謀であるかお分かりになるはず。むしろ電力会社の仰せの言葉通りに原子力発電所でも建設される方が、より環境保全に役立つのではありますまいか。

単なる処理施設

 さらにこの地で発電された電力が、一般家庭に売電され電気事業の自由競争化に発展し、電気料金の低減化につながるとすれば電力利用者(消費者)としては喜びとするところである。しかし、この電力が単に中部電力への売却であるとすれば、電力会社の設備投資の節約を助けるだけのことであり、企業間の利潤のたらい回しにすぎず、一般市民にとって何のメリットもないことである。
 以上のように、頭を発電所計画は単に残査油の処理施設としての意味しかないことが明白である。まさに100パーセント貴社の経営上の都合によってはかられているものであり、一般住民にとって何ら利益を得るものではない。したがって、当発電所計画は速やかに中止されるよう強く要求するものである。

地域活性化の具体的内容は?

 3月4日の四日市市総合会館での説明会の際、[こういう意見もいただいています」として、「地域の活性化のためにも、当該事業は必要なこと、一日も早く着工し、四日市の経済の立て直しに役立たせることを期待する。」というのを紹介されていました。

 コンビナート全盛の時代においても、『工場がくれば、市は発展する。』と行政は言い、それに合わせて企業(工場)が進出しましたが、市が発展することと、市民がそれにつれて豊になったと言いきれるのか、疑問のあるところです。”四日市公害ぜんそく”に代表される各種の多大な被害は、今も負の遺産を引きずっています。

 そうした中、今はやりの[地域の活性化]という言葉(概念)がとびかい、説明会で意見を出された市民に限らず、市民の中に、『工場が繰れば市は発展する=地域が活性化する』と思い込んでいる人たちが多数いると思いますので、これについて、コスモ石油(株)として、売電のための火力発電所を建設することが

  1. どのように、地域の活性化になるのか(ならないのか)
  2. 四日市の経済の立て直しに、どのように役に立つのか(ならないのか)
  3. それによって、市民はどのように豊になるのか(ならないのか)

「エネルギー供給という社会的に重要な役割を果たしております(小冊子『あらまし』のはじめに)企業として、概念、言葉だけでなく、具体的にその内容を表明する責務があると思います。

情報の公開と市民との対話について

・「住宅の隣接地に午起製油所は作らない」と公約したのに、「そういう約束は、新しい所長になってからしたわけではない」と約束を破り製油所を作った。
・四日市公害はもうたくさんだという市民の声を聞き入れず、騒音や悪臭を出し、市民を苦しめた。
・石油関連会社はもういらないという市民の願いを裏切って、第3コンビナートに進出してきた。
・タンクを作ると言って進出してきたところに、火力発電所を作ると決めてしまった。
・発電用の燃料に含まれる硫黄分は、四日市公害がひどかった頃よりも多いが、常識を欠いている。
 今までの経緯から考えると、四日市市民の期待をことごとく裏切り続けてきたコスモ石油を信じることができない。信ずるに足りる情報の公開や市民との対話をする必要性がある。
今後どのように、情報を公開し市民との対話を広げていくのか、市民に対して、信義を重んじ誠実に、具体的にその姿勢を示せ。

環境対策について

・緑化率向上をはかるために、既設施設跡地を緑地にしていくべきである。
・「発電所からの排出量の増加には、四日市精油所の環境対策設備を増強することによって排出量の削減をはかり・・・・」とあるが、排出量の削減とは、何がどう削減されるのか。具体的に示すべきである。
・温暖化ガスに対する対策が見えてこないが、具体的に市民に対して示すべきである。
・発電用燃料は、もっと、硫黄分の少ない物にすべきである。
・廃棄物は、既設製油所で焼却処理をするとあるが、ダイオキシン対策など有毒ガス対策を示せ。
・今後の増設の計画はすべきではない。
・監視計画については、工事中、運転開始後の環境監視の測定結果を、市民に対して公開すべきである。

四日市公害について

 四日市公害から何を学んできたのか。その経験をどのように生かそうとしているのか。この地に、公害を発生させうる施設を建設する以上、このことをしっかりと市民に対して示さなければならないし、その義務がある。

建設用地について

発電所を建設しようとしてる土地は、20年前の1,979年(昭和54年)3月31日に、取得3年以内に、「原油と製品声および付属設備を建設する」との計画を明示、四日市港管理組合の管理者である三重県知事と、大協石油社長との間で、「土地売買契約書」を結んでを取得したものである。
 その契約書の第1条で、信義を重んじ誠実に本契約を履行しなければならない、とあるのに、20年たった今も、原油と製品タンクを作るという契約が履行されていない。
 四日市港管理組合は、情報公開の文書請求に対し、履行を迫った文書が存在していない、口頭でもしていないと思うと答えている。
 コスモ石油も同じように、契約のしっぱなしで推移しているようだが、そうした無責任さについて、市民が納得できる釈明をまずしなければならないと思うか、いかがなものか。

 用途変更について、その後の社会情勢、経済情勢の変動からして、ご理解いただけるものと考えていますを、四日市再生、公害市民塾に返答しているが、20年間もほったらかしにして、なおご理解いただけるものとする、社会、経済情勢の変動の中身について、理解できるよう説明する責任があるので、ぜひとも答えてほしい。

 今からでも遅くはないので、製油所内の原油と製品のタンクを、霞の用地へ移設してはどうか。工場立地法で定められた20%の緑地滞確保について、四日市の大工場の中で、コスモ石油だけが5%という最低であり、災害の見地からも有効だと思う。

石油会社が、なぜ火電か

 規制緩和ということがあるにせよ、石油会社が、なぜ、、発電、売電なのかという疑問がぬぐえないでいる。
 「増加する軽質油を需要に応じて供給するためには、重質油もそれに応じて消費されなければ、石油製品を安定的に供給することが困難となる」と説明しているが、1992年(平成4年)には、重油を分解して、灯油やガソリンなどの軽質油を作る技術が開発されている(石油情報センター)と言われ、四日市でも昭和四日市石油は重油分解センターを建設・操業している。
 電力の安定供給は電力会社に任せ、石油会社は石油の安定供給のために軽質油のプラント建設の方が理にかなっていると思うが、コスモ石油としてそのことを考えなかったのか。考えなかったとしたら、その理由は。

環境影響評価について

 硫黄酸化物、窒素酸化物、ばいじんについて、「低減をはかります」「問題ありません」は常識中の常識。
 同様に、地球温暖化ガス、CO2についても、今や、低減は常識中の常識なのに、CO2排出対策はどうなっているのか。環境影響評価要綱にないからとか、法に従ってやりますという言い逃れは通用しないので、排出抑制と具体的なことを示すべきである。
 コスモ石油は、ISO14,001(環境保全に関する取り組姿勢や管理体制が、国際的な基準に適合)の認証を取得しているというとであればなおさらのこと、法律や、行政がどうあろうと、当然、対策がとられていると思うので、示すべきで、ないのなら、低減対策が確立するまで、建設は中止すべきである。