公害の歴史に学ぶ

 

 知事・市長は、全国的に見ても、住民に開かれた行政を行う主張として名高い。確かに、これまでの田川知事や加藤市長などと比べても、北川知事・井上市長は、住民はといった見方がされてきている。
 なのに、開発・建設といったことでは、従来の行政・手法、
・・・先ず建設ありきで、手続きを進め、自治会長にだけこっそり話す、万事整った上で住民に説明かなるものをおこなう、これは決して、白紙でおこなうものではなく、あくまで、建設のための説明会であり、やがては、行政としては住民にご理解いただくよう十分なご説明をさせてもらいました。(賛成する、理解したと言っておられませんが)、ご理解いただけるものと思います、として、仕上げには、住民抜きの審査会の答申(茶番)の御旗を掲げ、ゴーサイン。その一方で、自治会長と公害防止協定を結ぶ、そのさい行政は、自治会員のみなさん(住民)と相談しなさいとは決して言わない・・・
 四日市公害の中でさんざん繰り返されたことを、二度とあやまちを繰り返さないと言いつつ、性懲りもなく、繰り返しているのが、ごみ溶融処理施設の建設である。

【事例】 魚あら処理・北勢ハイミール建設事件

  1. 魚あら処理による悪臭で、平山物産(生桑神田町)を廃業させ、代わりに河原田地区の内堀町に処理場・北勢ハイミールを建設するとして、ひそかに内堀町自治会長などを、新しい処理施設のある福岡などへ視察に、市などが連れて行った。
    ※三重県北勢ハイミール事業協同組合の設立は、1980年(昭和55)6月。

  2. ハイミール建設を知った内堀町住民は、自治会総会をもち、満場一致で反対を決議、自治会長を更迭、反対意志を、行政、河原田地区連合自治会に申し出た。

  3. その一方で、建設予定地はもともと、公害・迷惑施設をつくらないとの口約束で市開発公社へ売却したのであり、約束違反。土地を返せと3人の元地主が裁判所へ仮処分申請。裁判所は、その申請を認める「決定」を下した。行政は、その3人の土地をのけての設計変更をし、あくまで建設しようとした。

  4. ハイミールについては、楠町は議会で反対を決め、自治会など各団体も反対を決め、塩浜地区と内堀町以外の河原田地区の有志(河原田地区での反対署名は7割以上)、農芸高校でも反対を決めた。

  5. これに対し市は、塩浜地区の2町に、集会所建設費用を総務部地域振興費から支出、切り崩しを図り、先ず塩浜地区連合自治会で、建設賛成の「公害防止協定」締結を決めた。

  6. 塩浜地区が決めたからと、河原田地区連合自治会も、同じ内容の「公害防止協定」締結を決めた。そのさい、かんじんの地元である内堀町自治会長抜きで、「なぜ通知しなかったのか」と問いただしたところ、「内堀町は反対なので、まとまらんから呼ばなかった」と、連合自治会長(川尻町)は答えている。なにをかいわんやである。
    ※公害防止協定書の締結は、知事・市長を立会人として、1982年(昭和57)2月に締結している。

  7. 行政は、三重県公害事前審査会に、スウェーデンのガデリウス社のプラントによる建設について諮り、妥当(悪臭発生せず)との答申を得る。

  8. 住民側(内堀町自治会住民総意、塩浜地区の河合町などの反対住民組織、楠町議会・自治会などの各団体)は、ここにおよび、裁判所へ魚さい処理施設建設禁止仮処分を申請、1983年(昭和58)7月、第1回口頭弁論があり、9回の審尋があった。

  9. この中で、筋の通らない行政が明らかにされ、一方的に平山物産を悪者に仕立てた理由で、行政は建設を断念した。

    • 市環境部長が行政の証人として出廷
      住民側が(反対尋問で)、河原田地区住民の7割以上が建設反対で署名している請願が市議会へ提出されているのを知っていますか、「はい、知っています」。それなのに承認は先ほどから、反対は一部住民と言っているが、どういうことですか、「・・・・・・」答えられずに立ち往生。行政側代理人の市顧問弁護士が、「君、はっきり言い給え、自治会長が賛成ならばその地区は賛成ということで行政はやっているんだろ」と異例の助け船、証人は助かったとばかり「はい、そうです。そういうことです。」救われたと思ったのもつかの間、裁判長が「それはどういうことですか、自治会長は一人、住民の大多数が反対だというのに、反対は一部住民っていうのはどういうことですか」またまた答えられず「・・・・・」
    • 無公害の答申を出した会長(三重大教授)が、行政側の証人として出廷
      公害事前審査会で無公害の答申を出した会長(三重大教授)が、行政側の証人として出廷、行政側の主尋問で、自信を持って証言。次回は、住民側が反対尋問。中央公害審議会の悪臭問題専門家が、三重大教授の無公害答申について、文書と論文で「無公害ではない」と指摘していることについて、住民側代理人が尋問したことに対し、「・・・・・」立ち往生、裁判長に「答えなければいけませんか」と助け船を頼んだが裁判長は「証人は、宣誓をしたのですから答えてください」とはねられ、「その専門家がそういわれるのであれば無公害ということにはなりません」と証言。悪臭発生を認めてしまった。

 こうした行政のやり方、先ず建設ありきで、後はつじつまを合わせるだけといったやり方は、いっこうに改まっていない。
 ポイントは、自治会長を利用するということである。自治会長の多くは、決して腹黒い人ではないが、行政に「会長さん」「会長さん」と立てられ、うまくあやつられるということだが、その地区の人々が知ったときは、手順はすんでいる。進んでいて止めようがない。
 “四日市公害のあやまちを繰り返さない”は、大気汚染をひどくさせないということではなく、情報公開、政策合意、住民主体の実を挙げるということである。