コスモ石油四日市霞発電所

環境影響評価

 5月2日,四日市市総合会館の会議室使用申し込みに行ったさい,隣の市役所1回ロビーへ寄ったら,窓際に,分厚い「コスモ石油四日市霞発電所・環境影響評価書」と同「要約書」(平成12年4月)のパンフが置いてあった。“縦覧”という目立った表示はなく,それこそ,たまたま目についたわけである。
 発電所アセスの最後の縦覧をやります,やっていますという“お知らせ”“記事”はついぞ見たことがなく,たまたま寄らなければ知らずじまいになるところであった。三重県は,“国づくり”策定などで,「意見書」を提出すると,策定後,その「策定書」を送ってくれたりしている。アセスについても「意見・質問書」を提出した人に,「要約書」を送付してくれるか,縦覧についてのお知らせ(はがきでいい)を送ってくれる親切さがあってもいいのではないだろうか。“要覧”にそうしなさいと条文がなくても,送付して違反になるということにはならない。そうしてこそ“情報公開”となり,“ご理解とご協力を賜りますよう”になる。

 平成11年2月の「環境影響評価準備書」の“縦覧”や”説明会”について,公害市民塾のメンバーや住民から,大きな項目で275ほどの「地元意見」が出されていて,「評価書」では,それに対し「事業者の見解」なる回答がなされている。
 「要約書」には,そうしたものはなく「「調査の結果の概要」「予測および評価の結果」「環境保全のための処置」として書かれているのみであり,「評価書」の中から,若干の項目を次に上げて参考に供したい。


市民からの意見・質問
コスモ側の回答
 建設用地の取得と用途変更について,3年以内に原油・製品タンク建設の制約なのに,全然作られないし,昨年になって用途変更申請をした。その間,どういうことを甲の四日市港管理組合としていたのか。それと「社会情勢・経済情勢の変化」の理由について,どんな情勢なのか,その内容を具体的に説明してほしい。

 建設計画地に関しては,昭和54年に原油・石油製品の備蓄を目的としてタンクを建設する計画でした。しかし,第2次石油ショック以降,石油製品の需要の減少と国家備蓄が盛んになったこと等から,弊社としては,タンクを建設する必要がなくなってきました。
 このような環境の変化があり,弊社としても当該土地の有効活用を図るため,事業計画変更の申請を行ったところ,「公災害防止および環境保全対策に努めること,法および関係官庁の指導に従うこと」の条件を付して承認されました。

※注1

 何故,売電なのか。平成4年には,重油から軽質油を作り出す技術が確立されたということだが,石油の安定供給を考えるならば,昭和四日市石油がしているように,そうした軽質油製造を考えなかったかどうか。  重質油の有効利用を図るため,弊社の場合は発電所の燃料とすることが最適であると判断しました。
 「重質油の有効利用,すなわち石油製品の安定供給」を目処として,霞発電所のエネルギー源として,聞きしにまさる粗悪燃料を燃焼させる発電計画事業をそのまま肯定する訳にはいかない。
 また,「排出濃度を可能な限り低減」すると主張しているが「排出量を可能な限り低減する」とは言っていない。希釈の問題ではないか。

 減圧残油は硫黄分4.6%と硫黄含有量の高い燃料ですが,発電所ではそれに対応した高性能の環境対策設備を設置します。
 煤煙の除去効率は,脱硫装置で99.5%,脱硝装置で92%,集じん装置で,99.6%であり,最大負荷時の排出濃度および排出量は,硫黄酸化物は16,5ppm,11.2m3N/h,窒素酸化物は15ppm,9.8m3N/h,ばいじんは0.009g/m3N/hとなります。

※注2

 大気汚染に関する低減策と同様に,地球温暖化ガスである二酸化炭素についても排出抑制の具体的な対策を示すべきではないか。環境影響評価要綱にないとか,法規に従うとか言い逃れで具体策がないのであれば,発電所建設は中止すべきである。  当発電所における二酸化炭素の排出抑制対策としては,高効率の発電設備とすることにより,燃料の節約に努める計画です。
 高効率科のための具体的な内容は,蒸気タービンの高効率タイプの採用,ボイラでの汚れ対策による熱回収性能維持,ボイラでの排熱ロス低減対策等で,これらにより発電効率を約3%向上しています。
 煤煙について,脱硫効率99.5%で年間約80トンの硫黄。脱硝効率92%で年間約?トンの何か。除じん効率99.6%で年間約?トンの何が出るのか分からないから,適切な対策や高効率の環境対策施設に該当するのかしないのか判断ができない。  発電用ボイラの煙突から排出される煤煙は次の通りです。
 脱硫効率:99.5%で硫黄酸化物排出量は年間38.702m3N。
 (硫黄換算では,約55トン)
 脱硝効率:92%で,窒素酸化物排出量は年間64.332m3N。
 (NO2換算では,約130トン)
 除じん効率:99.6%で,煤じんは移出量は年間25.741s。
 四日市公害から何を学んだのか。その経験をどのように生かそうとしているのか。この地に,公害を発生させうる施設を建設する以上,このことをしっかりと市民に対して示さなければならないし,その義務がある。  弊社は,地域との共生を図るべく,公害防止および環境保全のために環境対策に万全を期すことが必要と考えます。当計画では,煤煙について高性能の処理装置を設置して排出量を極力低減させます。また,廃水についても冷却水に海水を使用せず,工業用水を循環利用し,放流水流を少なくし海域環境に及ぼす影響を低減させます。しかしながら,発電所の環境負荷増加がわずかながら発生することから,既設製油所でも環境負荷を下げる設備を新設し,発電所と製油所を合わせた排出量合計を現状値以下とする現状不拡大を達成する計画です。されに,騒音・振動等についても適切な対策を講じ,周辺の環境保全には十分配慮します。
 公害市民塾の沢井氏が公害および設置に関する公開質問状(1998年1月)には,どう回答したのか説明を求む。  沢井様のご質問は,アセスメントでの発電規模,住民および行政との当計画に関する合意状況,計画地の土地用途変更手続きの状況,緑地の増設の可能性,二酸化炭素削減対策,四日市で煤煙発生装置設備の問題の有無でした。
 これに対し弊社回答の主旨は,送電規模は20万キロワットで計画すること,住民・行政との合意はアセス手続きの中で得ていくこと,土地に関しては現状でも法に準拠していること,煤煙発生施設設置可否に関しては高効率設備を設置する等の万全の対策を講じて対応すること等を回答しています。
 緑化率向上をはかるため,既設施設跡地を緑地にしていくべきである。

 弊社製油所は,昭和18年に操業開始した歴史ある製油所で,装置が立て込んでおり緑地にできる有効な土地が少ない状況ですが,法に則った緑地面積は確保されています。
 また,今後とも環境保全の観点から,設備の新設および増設の機械には,できるだけ緑地を増やすべく努力します。

※注3

※注1

  1. 大協石油(現コスモ石油)と四日市港管理組合と出結んだ「土地売買契約書」は1979年(昭和54年)3月31日。第二次石油ショックは1979年(昭和54年)1月17日,(第一次は1973年・昭和48年10月17日)。

  2. 石油ショックは,第一次よりはじまっており,需要の減少と国家備蓄云々は理由にならない。よしんば,理由になったとしても,契約後3年以内にタンクを建設すると決めているのに,20年後の1999年(平成10年)2月27日付で,「霞工業用地の事業計画変更」の申請をしている。

  3. これについては,公害市民塾のメンバーが,情報公開で「売買契約書」の公開を請求したことに対し,’99年2月21日に「文書開示決定」があり,「契約書」を入手。そこには,3年以内にタンクを作ること,タンク以外に使用してはならない,契約以外の目的に使用したときは契約を解除するなどの条項が書かれていた。

  4. その契約違反について,四日市港管理組合に行って質したところ,タンクではなく火力発電所を作るとして1年前からコスモは工務課の方へ話しを持ってきていると回答した。

  5. 契約違反について,過去に管理組合としてコスモに差し出した文書(警告,指導など)もしくは口答でなした控えを公開するよう請求したら,そういう文書はない(何もしていない),口答でもしていないだろうという開示であった。

  6. ここにきて行政は,契約違反の大失態を何とかしなくてはということになったのだろうが,コスモに事業計画変更の申請を2月27日に提出させ?(火力発電所の話しなり,アセスはずいぶん前から実施していることからいって,企業・行政は共犯としかいいようがない),3月24日,四日市市長は,「四日市港管理組合の契約上の問題」なので市としては差し支えないと計画変更を認め,管理組合(知事)は年度末の3月31日付で事業計画変更を承認した。責任のありようも何もあったものではなく,つじつま合わせとしかいいようがなく,事業計画変更の大義名分は,コトバ上だけで,具体的な内容,説得性のない「社会情勢・経済情勢の変化」を理由にあげている。

  7. 環境影響評価アセスメントは,最初に建設ありきのアワセメントだと読んだり,聞いたり,思ったりしてきたが,情報公開のおかげで,行政と企業のいい加減さ,無責任,頓着を,ことのほか思い知らされた。

※注2

四日市公害の被害甚大であった1963年(昭和38年)頃,石油化学コンビナートで使用されていた重油の硫黄分は,原油で1.4〜3.3%,残渣重油で,3.0〜4.3%という数値。コスモ火力が使用する重質油の硫黄分,4.6%となっている。

※注3

四日市公害裁判の判決は,住宅に隣接して工場を建設したと,まず立地上の過失を裁いたことで,国は,工場立地法を制定,20〜25%の緑地を確保しなければならないと決めましたが,これには抜け道があって,既存の工場には適用せず,設備の新設および増設の機会には20%にしなさいということですが,コスモ石油は市内主要工場の中でもダントツに低く5%しかありません。「法に則った緑地面積」などと言えたものではない。だからこそ,タンク建設の目的で土地を買ったんだから,火力をつくらず,製油所内のタンクを移設して緑地面積を増やしてほしいと言いましたがだめでした。

上記のこと中で,地元住民から,COP3において指摘された,温室効果ガスの大幅削減について,火力発電所建設計画は,それに逆行するものである,とする意見に対し,コスモは,省エネルギーに関し,平成22年でのエネルギー消費原単位を,平成2年度比で10%削減することを目標に,達成に向けて努力しているところで,発電諸計画でも高効率の発電設備とすることにより,CO2発生の抑制に努めている,というだけで,CO2削減の具体的なことにはふれていない。こんなことでいいのだろうか。