「工場が来れば、市が発展する」

 この言葉は、高度経済成長の頃より唱えられ、“神話”となっている。
 市が発展することは、市民が幸せになってこそである。
 そうすることが政治家のつとめだと思います。

企業立地促進条例

 新たな企業の誘致や今ある企業の設備をさらに広げることを進める条例案が出されました。
 四日市市内に製造業や研究施設などを建てると、3年間税金(都市計画税、固定資産税)の半分は、奨励金として返すというものです。これは、今あるコンビナート企業が、新しく施設やプラントを建設しても適用されます。
 現在コスモ石油が火力発電所建設を計画していますが、この建設に対してもこの条例が当てはまることになります。
 この地が、いわくつきの埋め立て地であることを考えると、すっきりとしないものが残ります。また、コスモ石油火力発電所建設計画自体がすっきりしないものだったのだから、よけいにその思いが大きくなります。

宮本憲一・立命館大教授

(四日市公害にゆかりが深い教授)

 税収ということについて、四日市市についていいますと、税収が約100億円あるんですが、100億円のうち70億円が国にいくのです。20億円は県にいって、四日市市に落ちるのは、10億円しかありません。
 だから、一見すると税収ざくざくに見えるんですが、多くの部分は国がとっていくんで、つまりコンビナートを誘致して開発すればするほど、国は金がざくざく入ってきますが、自治体はそれに伴って公害を受けてしまうということになります。

 [固定資産税の免税分と四日市公害裁判の賠償金]

 コンビナート3社(中電、昭石、石原)が、四日市市へ納入する市税(固定資産税委)の1973年度、1年分の免税分は9709万円にのぼっている。
 これは、四日市公害裁判で敗訴した6社(上記3社と三菱化成、油化、モンサント)が、原告患者に支払った賠償金は9619万円と、ほぼ同額である。
 四日市公害発生から、5年間の裁判を含め12年間の苦闘の末に得た賠償金が、3社の1年間の免税分にも当たらぬのである。

「日本の環境問題−その政治経済学的考察」 宮本憲一教授、有斐閣 (1975年9月刊)より

宮本憲一教授は、朝日新聞の取材の中で、次のように述べています。

 「・・・四日市市は本当にアメニティー(快適な環境)や文化のある街になったのか。いつまでも海岸を工場が占める状況でよいのか。公害は「克服」されておらず、ただ有害物質が少なくなったというだけではないか。・・・」

 これは、2000年の2月26日の朝日新聞から抜粋したものです。
  公害患者がずっと言ってきた

  「現在の環境基準は、工場が成り立っていくための基準である」
  「ここまでは汚してもよろしいよっていうお墨付きをもろたんやがね。(米本判決に服しますって、判決で出された賠償金を支払った。一方で、亜硫酸ガスの総量規制も、環境基準の数字を達成した)そうしたらね、それさえ守っておれば永久にここで営業しておれるんやんか・・・」
を、

もう一度、企業や行政、私たち市民もかみしめなければならないと思います。