火力の運転と汚水
今からしてみると、結局、わずかばかりの金でカタがついて、排水口はそのままっていうのは、不満なとこもあるわけなんですよ。
ところが、40年ですか、補償をうける時点では、会社はちょっと考え方が変わってきておったわけなんですね。
38年には盛大に四基(発電器)ともフル運転やっとったけども、40年に補償を受けるときには、一基くらいとまったと思うんですね。
会社の言い分としては、四日市に大きな火力発電所(第二コンビナート、66万キロワット)ができるんだと、それで三重火力については将来閉鎖してしまうという事態になるかもわからんのやと、
もう深刻に考えてもらわんでも、漁業者に迷惑かけるようなことはないだろう。これより減ることはあっても増えることはないだろうと、そういうことも含んで今度の解決にあたっては了解してほしいというような話を聞いたように私は記憶しておるんです。
たしかに事実、そういうふうになっていったんです、最近まで。 一時閉鎖するようなとこまでいったわけなんですね。その後じりじりと。
ほれで、現状からいくと、たしかに中電がとまると、四日市全体のこと言えば解決しとらんけども、うちが直接うける汚水については、火力の水によって汚されたっていう確信をえたというのが・・・。それがここ一年、一年、よくなってきたんですよ、この周辺が。
まあ当初は貝なんかもおったやつでも、全部死滅してしまって、ひとつもわかなかった。それが、火力が一年、一年、発電器がとまって、一時は閉鎖状態っていうか、なかの行員さんなんかも他へうつしてですね、ただ工場をなにしていくだけの人間だけにしぼったわけなんですね。ほれで、関西方面で電力が足らんときにですね、少し、いっぺんつ、一基だけまわしてその補給をしとるという程度でやってきたもんで、一年一年よくなってきたんです。
ではっきり言えることは、会社にも説明に行ったこともあるんですよ、所長の所へ。38年頃、こういうこともあったけどもやな、今になって現場をみてもらい、われわれの言うことから判断してもらえば、たしかに三重火力だけが悪いんじゃないけども、四日市港の汚水をひっぱって冷却水に使って、こちら(磯津・鈴鹿川側)へほっとるからして、われわれが直接影響を受けたんだということは、明らかに、今になったらわかったと。会社でもわかってもらえるはずだと。
それはなにを意味するかというと、ひどいときには貝が全然壊滅しておらなかったやつでも、いまわおるわけなんです。その中にはくさいのもあるけど食べられやんことはないわけですね、ここ2〜3年。
また最近状勢がかわってきてですね、 一基、一基つ増やし、最後には元通りに増やすっていうような、新聞なんかでも発表あったわね。おそらくこれまたフル運転したらですね、またもとの原状にもどるちゅうことの気がするわけなんです。
それでそのことも、わたし組合長になってから二回ほど中電の方々に言って、その当時のもよう、また現在は、おたくがとまっとるからして、こういうふうによくなってきとるんだと、元に戻して完全に操業に入った場合は、また、まなしに(すぐに)37〜8年の状態にもどるんやないかという心配をぼくはしとるんだと。そのときによって、またああいう38年の問題(水どめ)をひきおこしはしやへんかというような気がしてならないんだと。そのへんについて充分に会社の方も考えてほしい、もう前にすんだんやから、あとなにやってもいいんだというような考えは一切もたないでくれと・・・。
火力が運転やめたときに、南のほうからですね、 水のええほうからですね、徐々に貝なんかもわいてきて、今の火力に近いですね、川口近くまで貝はおるわけなんです。アサリ貝は。
これというのも、みな企業がよごしとるのやからしてね・・・そりゃ「うちはよけ出しとりません・・・うちは出しとりません・・・」と言いながらも、多いからして、そいらが一つになったもんは年々に積み重なって悪うなってきたわけなんです。
どんな会社でも、昔よか能率を下げる会社、一つもあらへんわねえ、みんな増やしとる。それで、それらはダマってけっかる、一言も。市や県には許可もらわんならんで言うとるかしらんけど、関係組合には何とも一つも言うとらん。・・・。でわれわれがみつけて、なんだ、これ前のと変わっとるやないか、こういうことダマってやってもろたらどもならん・・・言うた時分にもなにもかも出来上がってやねえ、つつみつつんでしまっていうような現状やさ、みんな。
石原産業でも、一五〇〇トンの能力をあげるためにやねえ、最近、沖へシュッと、まっ黄なった水が出てるでしょ。あれは石原の、大きく会社をふくれあがらせるためにしたからしてねえ、一五〇〇トンの処理のできる機械を一基、まずそなえつけたんですよ。
われわれくわしいことまで知らんけどね、その排水がやね、知らんとる(知らない)うちに海の底へね、上へダーッと流すと目立つからパイプを知らんどるうちに海の中へ引いてやねえ・・・。
石原の排水口、見てみなはれ、下からモコーッ、モコーッと出てくるんやに・・・。それでじっさい出てくるやつをシコッとすくってやねえ、・・・。 四日市港の場合は、〇.〇一ppm以上はいかんっていうことになっとるわなあ、なにがそんなもん、守ってるとこ一つもあるかさ。
石原の水(排水)ちょっと汲んでやねえ、六から七くらいはぜったいにあるようにわれわれは確信しとるんや。あの辺(排水口)で魚ほうりこんだら一発でコロッといく、魚はいって(死んで)しまう。そりゃ少し離れたとこ行きゃ、二とか三とかで下がっとるかしらんけどやねえ、ほんなもん、海の底からゴボッ、ゴボッて出てくる排水を汲んだらたしかにあるはずですよ。
どんな規制されてもやねえ、それ以上オーバーしたら、こうします、ああしますっていう法律がないのやであかんわ。こういうことはしてはいかないという法律はあっても、それ以上のことをしたら取り締まるというきめがないのやもん、なに決めたってあかんということだわ。悪いことしたやつがわかっとっても、それを取り締まることができないというようなナマヌルイ法律こそ決めてないのやもん、いかんわ。そうでしょ。
それでね、われわれはなにかにつけて不利益なんですよ。ま、会社なんかでも、ギャンギャン言うてくとやねえ、うちは規則どおり、法律どおりにやっとるんですよ・・・
と、こうくるわね。またそう言って逃げられてもしかたがないですよ。それで結局、いま言うたふしに(いま言ったように)漁業者が泣きねいりせんならん。われわれから言わすと、企業本位な法律であってねえ、住民とか、漁業者とかいうものの、働いて食べやんならんもののことはぜんぜん考えてもらってないというても、これは言いすぎではないと思うんですね。
(一九六九年五月一〇日)