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市民塾の瓦版より
「環境を学ぶ研究者にとって四日市公害は世界的に有名だ。工業が発展し、公害を克服してきれいになった四日市の空を実際に見てもらえれば、公害で苦しむアジアの国にとってお手本になる。それが、四日市から世界へ発信するメッセージだと思う。」
2003年5月、世界各国の研究者と技術者が集い、環境汚染を防止する技術を話し合う「持続可能な成長と、エネルギー・環境技術に関するアジア太平洋会議」(四日市大など主催)について語った、実行委員長(教授)のねらい。
余りにも単純・短絡しすぎていないだろうか。亜硫酸ガスだけで苦しんだわけではない。公害は、そんな簡単なことではない。
宮本教授は「公害や環境破壊はピラミッドの構造をもっているのだ、健康被害はピラミッドの被害の頂点であって、その裾野には海の破壊、文化の破壊、街の破壊、地域の生態系、地球の生態系の破壊が横たわっている。この全体像とタックルしなければいけない。しかし、私たちは、1960年代、70年代の初めは、その頂点の公害、健康被害、これを何とかすること、このことだけで精一杯であった。」と述壊しておられます。
公害は大きなピラミッド状の被害を起こしているのであって、本当に美しい街として四日市を再生したり、全体の被害をなくすところまで行かなければならない。そうでなければ環境保全の運動は終わらないのだということを感じます。私たちは、この危険をアジアに伝える場合にも、狭い意味での公害対策、公害被害の補償の経験だけではなくて、四日市の地域の自然と文化と都市の再生を通じて、新しい開発のモデルを示すことによって私たちの経験をアジアに伝えなければならない、これが大事なのです。
宮本教授は、国際環境技術移転研究センターの、部分的な公害技術移転、多少のアジア研修生の受け入れ、そして、亜硫酸ガスの濃度が多少減ったということだけをもって、四日市が公害を克服したといってもらっては困るということなのです。
残念ながら、国連環境計画(UNEP)の「グローバル500賞」を四日市は受賞しております。私から見て、受賞の価値があるのかどうか、はなはだ疑問であります。もし受賞するとすれば、四日市がこの公害の都市から真に、かつて菜の花畑が広がっていた、原風景の四日市の豊かな地域環境を取りもどしてこそ受賞に値する、受賞の実を持つと思います。
今日、磯津地区を見て思いました。あそこはかつて砂浜であり、あそこに美しい松林がたくさん植わっていたという話を公害被害者の方がお話しになりました。それがみんななくなってしまった。いま細々と釣りをやっているけれども、漁業もつぶれている。何か本当にさびしい町になってしまったのですとおっしゃいました。
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